みつめる

観たもの、考えたこと、あれこれ

230920&230921 キングオブコント準決勝@目黒パーシモンホール

久しぶりに2日とも見に行ったので記録。去年の会場が大きすぎたらしく今年はこぢんまりした区民ホール。最後列でも見やすい&聞きとりやすくてびっくりした。

一方で相変わらず審査員が全員中年男性で馬鹿馬鹿しい気持ちにもなった。各コント師のネタはおもしろかったけど、もう「キングオブコント」なんてそれらしい名前ではなく「中年男性が選ぶいま一番面白いコント」にでも大会の名前を変えてはいかがでしょう。めっちゃ嫌味な言い方してしまう。自分はまだ/もう中年ではない!という人が審査員にいたら申し訳ない。去年も同じこと言ってた気がする。

中年男性にもいろいろあるのは百も承知だけれども(入社後一発目の配属先で目にしてびっくりした「フロア一面に広がるおじさんのお花畑(※花の種類は様々)」を思い出す)、「笑い」という、個人の経験や社会の捉え方にも密接にかかわるようなものを評価する人たちの「属性」が2023年にしてここまで同質なのも珍しいのでは。私がいる環境がテレビ業界とは違いすぎるから?

ここ数年で社会の空気が大きく変わったとはいえ、人材は急に増えるわけではないので仕方ない部分はあるんだろうと思いつつ、誰かが(ファンとか)それに対して問題提起するわけでもない様子を見ているとこの状況はこの先しばらく変わらないんだろうとも思う。という私も、ガチ勢ほど気合いの入ったお笑いファンでもないのでつい傍観者の立場を取ってしまう。

コントは好きだし、キングオブコント準決勝でおもしろいコントをたくさん見ることができるのもすごくありがたいが、中年男性のみによって構成される審査員たちに権威付けされたコント/コント師をありがたく拝むこの仕組みというか、それにはずっと嫌悪感を抱いている。決勝の審査員がマシになっただけでも大成長なのかもしれないですが。(ちくちく言葉)

コントは面白かった。タイトルは勘。

  1日目   2日目  
1 TCクラクション ワックスがけ ダウ90000 人間関係
2 天才ピアニスト 家具売り場 ファイヤーサンダー ツッコミ芸人
3 えびしゃ ゲーム レインボー コンビニバイト
4 ななまがり 本番に弱い男 ザ・マミィ 10年後
5 都トム 最終面接 クロコップ エメラルドパワー
6 滝音 老夫婦 コットン スリ
7 ジグザグジギー ラジオの公開収録 やさしいズ バイトの面接
8 連合稽古 カラオケ(相撲) ゼンモンキー 墓参り
9 さすらいラビー 女の子の部屋 伝書鳩 反抗期
10 ザ・ギース かが屋 準備の早い先輩
11 シティホテル3号室 酒造メーカー ラブレターズ 引きこもりの息子
12 ジャングルポケット 東京のおかあさん そいつどいつ 戦い
13 ゼンモンキー あやか や団 芝居の稽古
14 サスペンダーズ 無人 シカゴ実業 ギャンブル漬けの旦那
15 蛙亭 復讐 滝音 嘘発見器(寿司屋)
16 カゲヤマ 謝罪 隣人 賢いチンパンジー
17 伝書鳩 警察 さすらいラビー 黄色のバラ募金
18 シカゴ実業 定食屋 ニッポンの社長 手術
19 かたつむり ラーメン屋 蛙亭 大好きな彼氏・寿司
20 男性ブランコ お兄ちゃん 連合稽古 葬式(相撲)
21 サルゴリラ 野球部の監督 サスペンダーズ 花占い
22 そいつどいつ バイトの面接 かたつむり 映画撮影
23 クロコップ 卓球 カゲヤマ 優秀な部下
24 コットン 友だち 都トム 整体
25 ファイヤーサンダー サッカー日本代表 天才ピアニスト キャッチ
26 ザ・マミィ スキャンダル ジグザグジギー 市長の会見
27 やさしいズ アドラー心理学 シティホテル3号室 売れない俳優
28 ラブレターズ 彼女の実家 えびしゃ どっち?
29 隣人 落語を教える TCクラクション 山姥
30 レインボー 女芸人 男性ブランコ まかべさん
31 かが屋 ボイトレ ななまがり 赤ちゃん
32 ダウ90000 バー サルゴリラ マジシャン
33 ニッポンの社長 青春っぽい喧嘩 ザ・ギース 進路相談
34 や団 バックヤード ジャングルポケット 左遷先

1日目のザ・ギースのネタだけどうしても思い出せなくて「?」になっている。いろいろ調べてみたけど記憶が蘇らなかった。

2日通して好きだったのはコットンとラブレターズ。特にここがおもしろい!っていうよりただただずっとおもしろかった。できればあれをいつでも自宅で見れる状態にしたいので決勝で上位3組に勝ち残ってほしい。頼む。

好きだった・印象的だったネタの感想メモ。

1日目

天才ピアニスト:恰幅いいほうの人の声があまりに良い。ずっと聴いてられる。ラジオやってほしい。

滝音:老夫婦のやり取りを見て、最初「認知症…?」と思っていたら全然違うことがたった一言のセリフで示されて大興奮。そのセリフによって提示される状況も予想外でけらけら笑った。けれども最初に頭に浮かんだ「認知症では?」というのは消えないので、笑えたり笑えなかったり、若干バリバラでやってるお笑いの大会見てるときみたいな気分にもなって不思議だった。

さすらいラビー:人間椅子みたいなネタでめちゃくちゃ好きだった。演技なのか、もともとああいうキャラなのか分からないけど、女の子役の人の淡々とした感じがまた怖くて好きだった。ああいうおもしろいけど内臓がぞわっとするネタ最近あんまり見てなかったから?アドレナリン出まくってドキドキした。

蛙亭:フォルムと声がズルい。分かってるのにそれだけで笑っちゃう。

やさしいズアドラー心理学ではないけど、思想?がそれっぽい感じ。

レインボー:ただただ圧巻だった。あの早口嚙まないのも好き。あとたぶん個人的にキュンキュンするけどおもしろいみたいなの好きなんだと思う。俗物だ。

かが屋:ふたりの美声がホールにとどろくだけの時間がよかった。歌はうまければうまいほどおもしろい。平場で大きな声出したいからってボイトレ通ってた加賀さんのポテンシャル?がここで日の目を見てるってのもおかしかった。

ダウ90000:ウワこの状況心当たりがある、という笑いから全然違う笑いになってくのが楽しい。人が多いけどモブ的な人がいないのすごい。単独ライブ申し込んだ。

 

2日目

クロコップ:またゲームっぽいコントね、と思っていたら予想してなかった展開。

や団:灰皿回るのたまたまだと思ったらテクニックで舌を巻いたしめちゃくちゃ笑った。コントの内容でも芝居のクオリティでもなく灰皿回す技術が笑いに関わるコント初めて見た。

シティホテル3号室:導入の部分(事務所からの圧力が…)で時事ネタ!?とそわそわしてしまった自分がおかしかった。売れてない俳優として売れてる、っていう自家撞着の時点でおもしろい。

ジグザグジギーのはお笑いファンが大集合してる準決勝だからこそウケるネタっぽくてあんまりハマらなかった。あと全体的に2日目は若干ミソジニーっぽい?モノ扱いっぽい?ひやっとするネタがちらほらあった気が*1。ネタ全体の構造自体をちゃんとひもとかなきゃ批判ができないんだけど2日間コント見続けたせいでそこまでの体力が残ってない。

 

ひとつだけ駄目だったやつ。会場ではどっかんどっかんウケてたけど、1日目のカゲヤマのネタが個人的には受け付けなかった。「上司が部下の代わりに、別の部屋にいる偉い人に謝罪する」というネタで、申し訳なく思った部下が自分もと引き戸を開けるとそこには全裸の上司がいて、そのタイミングで観客の笑いが起こるというもの。もっと展開はしていくものの、途中で上司がまゆゆの写真集を模してみたりと、一貫して「脱いでいること」「裸であること」に対して笑いが起きる。

謝罪するために裸になること/舞台上で裸になることのばかばかしさ、上司のお尻が見えているという無様な様子、に思わず笑ってしまう、というのは理解できる一方で、これは人によってはハラスメントに見えてしまうのではないかとそわそわしながら見た。

以前からテレビは男性のホモソーシャル的な(≒体育会系的な)悪ノリを再生産しがちで、それこそドッキリGPでは男性を全裸にしたり男性の下着に異物を仕込んだりという昭和っぽい笑いがいまだにまかり通っているけれども、このネタはその延長線上にあるっぽいなあと。

主語が大きいかもしれいないけれど、男性ってどうして自分をも含む男性の身体をあんなにぞんざいに扱うんだろう。裸になること自体で引き起こされる「笑い」はたぶん、公式の場「なのに」裸(ふさわしくない姿)とか、そういう「ずれ」から起きているんだろうけど、男性の場合それが内輪での悪ノリ、パワハラ、性暴力まがいの何か、にもつながっていく気配があって、特に今は笑えなかった。

そもそも芸人にもお笑いファンにはいわゆる「陰キャ」≒「学校などで展開されるホモソーシャルな/体育会系的なノリに乗れなかった人たち」も多かろうに(コットンの西村も話してたみたいに)、こういういかにも陽キャ≒体育会系っぽいノリは受け入れられるのがなんとなく不思議でもある。「陰キャ」だからこそ、そういうコミュニケーションの方法を取るんだろうか。陰キャ陽キャ、体育会系的な悪ノリ、ホモソーシャル、あたりはもうちょっと丁寧にほどいてみないといけないのかもしれない。

キングオブコントの批判しつつもコントは好きなので決勝も見ます。ダウ90000の単独当たりますように。

おわり

 

*1:やさしいズ(即戦力の男性よりも「未経験でかわいい」女子大生を採用したい)、サスペンダーズ(花占いしている女性が「ホスト狂い」だとわかった瞬間の手のひら返し)、天才ピアニスト(「若く見えない」けどガールズバーのキャッチをしている:これはもうちょっとあった気がする……けど思い出せない……)、山姥(山姥がブラつけてることを「評価」するようなまなざし?)、あたり。