みつめる

観たもの、考えたこと、あれこれ

凡庸でご機嫌な日々

季節外れの連休をやっている。と書いてみて思ったけど、今は夏で、夏と言えば夏休みやお盆休みがあるからそれほど季節外れでもないかもしれない。アメリカにいる友人を訪れるために、今期に入ってから1日も使わずに有給休暇をためていたのだが、新型コロナのせいで計画はおじゃんになってしまった。そして、特に休みを取る契機もないまま休まず仕事をしていたら、人事部から「××までに一定日数の有給休暇は使うように」というお達しが来た。そんなわけで妙な期間に妙な長さの休みを取っている。部屋の掃除をしたり模様替えをしてみたり、あれこれしているうちに連休も終盤に差し掛かってきた。

4月から始まった在宅勤務もそろそろ板についてきて、休みかどうかに関係なく、朝はそこそこ決まった時間に起きるようになった。窓を開けると、見慣れた曇り空と少しひんやりした空気。そろそろ洗濯しようか。曇り空が続くなかで洗濯するかどうかを決めるのは、ちょっとした博打に近い。天気予報はあまり当てにならないが、念のために天気予報も調べて思い切ってリネンの洗濯を決行する。午前は仕事の勉強のようなものをしたり、同期の愚痴を聞きながらネットサーフィンしたりしているうちにあっという間に過ぎてしまった。お昼には最近ハマっている鶏トマトそばもどき。作り置きのいんげんガパオとトマトを煮たスープに、茹でたそうめんを入れるだけ。やっぱりトマトは最初に強火で炒めたほうがおいしい気がする。

午後、図書館から資料の準備が整ったよというメールが届いたので、返したい本を携えて家を出る。おばあちゃん家にいるときの夏みたいな涼しい風が気持ち良くて、ちょっとだけ懐かしい気持ちになる。そういえば、なんとなく敬遠して読まずにいた上野千鶴子の『女ぎらい』をやっと読んだ。各領域の超重要文献を出して簡潔にその内容をまとめながらも、堅苦しい語り口にはならないので、するすると楽しく読むことができてしまう。それはどうだろうと思わないでもない箇所もあったけれど、それを補って余りある知識量と読みやすさ。もっと早くに読んでおくべきだった。高校の頃から「ジェンダー」なるものへの強い関心を自覚していたにもかかわらず、「フェミニズム」にはうっすらとした嫌悪感を抱き続けていた。それが薄れてきたのはフルタイム労働者をやってみてから、ほんとうにここ最近のことだった。なんと根深いことだろう。

図書館で返却と貸し出しの手続きを終え、運動だからと寄り道したコンビニで欲望のままに甘いものを買ってから家に帰る。本末転倒もいいところだ。買ってきたロールケーキを食べて、借りてきた本を読む。前から友だちに勧められていたものの、本屋では見つけられなかった津村記久子『この世にたやすい仕事はない』。読んでいるうちに眠気に襲われ、夕方のチャイムで目を覚ました。薄暗い中でぼんやりしているとなんだか満ち足りた気持ちになって、わたしはこの穏やかな静けさを愛しているなと思った。新型コロナの状況は全然穏やかではないし(今日はまた最多感染者数を更新したらしい)、ときどき大好きな人たちに会いたくてたまらなくなるが、この静かな孤独もわたしには居心地が良くて、すごく大事なものだと思った。

そんな感じの連休終盤。ちなみに曇り空の賭けには勝った。

 おわり