みつめる

観たもの、考えたこと、あれこれ

要領良く仕事ができる先輩とあんまりうまくやれなかったわたし

ここ最近、業務中にどうしようもなくなってしまい、ふらりと近所の公園まで出向いて音楽聴いてしばらくリセットしないと何もできないみたいなことが数回あった。謎の動悸もあるし深呼吸しても胸がつかえてるしでこれはわりとヤバいんじゃないかと思いつつ、なんとなく過ごしてきた。そんなタイミングで、ちょうどチームから離れることになったので、ここ数か月のあいだ、自分のなかで何が起きてたのか、今後同じことを繰り返さないために何ができるのかを考えるために書いておく。

要領がめちゃくちゃ良い先輩がいた。とりあえず田中さんとしておく。見た目は大学生みたいで、しゃべり方もヘラヘラしてる。だけど、「解決」に至るための最短距離を見抜くのがはやい、言い換えれば、重要度が高い部分とそれ以外を見極めて取捨選択するまでがものすごくはやい人だった。例えば、上層部からなんらかの調査と回答を求められたとき、作業に取り掛かる前の段階で「調査を行う上での全体的な大前提は何か」「調査・回答を評価する最終権限は誰にあるのか」「権限を持つ人(人々)はどんな情報を求めているのか」といったことを田中さんはほとんど無意識のうちにリサーチしている。そのうえで、回答の提出期限までに与えられた作業時間を勘案し、「本当にやらないといけない、絶対外してはいけない部分」を抽出する。作業のスコープとアウトプットを明確にしてから作業に取り掛かるので、効率は良いし、実際のアウトプットも上層部が求める情報を提示していて無駄がないので、突き返されて再びイチからやり直し、というようなことも発生しない。ふだんも気さくにいろんな人とおしゃべりしていて、必要であれば他チームだろうがなんだろうが誰にでも質問しに行くから人脈も広い。仕事ができる人ってたぶんこういう人のことを言うんだろうなと思った。

けど、仕事の先輩としては全然合わなかった。とにかく何を聞いても「好きなようにやればいいよ」としか返って来ない。チームに入ったばかりのときは、何から何までちんぷんかんぷんで、そして、チーム内で「本当に何でも質問して良い」ということを知らずにやたらとビビっていたので、何を誰にどう質問すればいいのかも分からなかった。ビビらず自分から聞きに行く必要があったのだとも思うけれど、マネジメント層から特にこれといった指示もはなく、自分はどんな役割でここにいるのか、何を期待されているのかも分からない。そんな中で、田中さんは「分からないことはなんでも聞いて」と親切そうな顔で言うので、おそるおそるやっとの思いで質問してみる。すると、田中さんからは「〇〇さんがやりたいようにやればいいよ」と返ってくる。そもそものお作法も分からず、あるべき姿を思い描けるほど賢いわけでもなく、どこから何の知識を引っ張ってきたらいいのかも分からないので、「やりたいようにやればいいよ」という助言はやさしいようではあるものの、全然役に立たなかった。そんなことを言われてもどうすればいいのかてんで分からないぐらい何も分かっていない、ということ自体を明確に言語化したうえで質問や相談ができなかったわたしの至らなさも大いにあるのだけれど、そんなことを繰り返しているうちに、「業務について田中さんに相談する」という選択肢はわたしの中から消えた。仕事はめちゃくちゃできるかもしれないが、相談したとことろでわたしにとって役立つ助言が得られることはないと判断してしまったので、自然とそうなっていった。

そんな田中さんが、数か月前にわたしのSVになった。

それまでは別のおじさん(おしゃれな子犬みたいな人)(かわいい)がわたしのSVを担当してくれていて、おじさんはおじさんでやっかいだったりめんどくさかったりもしたが、お互いに言うことは言う関係をつくることはできていたので、それなりに仕事をすることもできていた。困ったときや分からないことがあったときに質問・相談すると、ヒントになるような答えや必要なインプットが返ってきた。わたしの質問の意味自体が分からないから説明してほしいと突き返してくることもあったが、それはそれで、わたし自身が自分の至らなさに気づき、改善策を考えるきっかけになった。他所から無茶な要求をされたときには調整かけあってくれたし、パワハラ一歩手前のような行動を取られたときには抗議して守ってくれた。基本的な価値観が合うかと言えばそうではなかったし、おじさんのやり方は違っていると思う部分もあったけれど、わたしとコミュニケーションを取る努力をしてくれている感覚があるというか、少なくとも信頼できると思える人だった。

田中さんに対して、おじさんに抱いていたような信頼をわたしは最後まで抱けなかった。業務上でのかかわりが全く発生しなかったときは、それでも問題なかった。休憩時間にどうでも良い会話をしてへらへら笑い、ときたま飲みに行ってへらへら笑った。それは楽しかった。でも、田中さんがSVになってから、仕事をする上でわたしは田中さんのことを全く信頼していないんだな、ということが分かった。

おじさんがいなくなり、ひとり投げ出された状態で進め方が分からなくなってしまって誰かに相談したいと思ったときも、どうせまた「やりたいようにやればいいよ」という答えが返ってくるんだろうなと思い、田中さんに相談することができなかった。1か月ぐらい奮闘していたけど無理だった。だれかに対して一度信頼できないと思ってしまうと、そこから再び信頼できると思える状態に自分を持っていくのはけっこう難しいことなんだなと思った。田中さん本人に「あなたのことが信頼できません」と言うわけにもいかないしで、ここ1か月ぐらいしんどくてどうにかなりそうだった。

田中さんの名誉のために書いておくと、途中でしんどいということを伝えたときから、色々と気をつかってくれてはいた(しんどいということを伝えたというか半ば無理やり共有させられたのは根に持ってるしわりとトラウマだけど)。しかし、田中さんはわたしの話を聞くというよりは、自分なりの助言をどんどん与えるというパターンが多かった。傾聴モードに慣れていたことや、わたしが口を開くのが遅かったこと、伝える度胸がなかなか出なかったこと。至らないところはたくさんあったのは百も承知だけど、ひとりでずっと喋っている田中さんを見ながら、わたしのことを何も知らないで色々押し付けられても、というような気持ちになってしまうことも1度や2度ではなかった。伝えたいことはあるのに伝えようという気力が出ないみたいな状態になってしまい、そのため、田中さんはインプットがないまましゃべり続ける、わたしはそれを聞いてさらに伝える気持ちをなくす、みたいな負のスパイラルに陥っていった。わたしもわたしでめんどくさいなまじで。コミュニケーションって難しい。

 

学んだこと

・新しい人たちと仕事をするときは、最初にまずとことん自己開示する。機会がなければ自ら機会を設ける。自分ができること、やりたいこと、できないことを洗いざらい説明する。

・自分の役割、期待されていること、与えられている権限を明確にする。自分の存在意義を明確に認識していないとモチベーションが死ぬ。そして、どこまでやる必要があるのか、どこまで責任を取る必要があるのか分からない状態が続くと精神がやられる。

・考えても分からないことや困ったことに出くわしたときは、無理せずまわりに助けを求める。自分ひとりで抱え込んでうまくいくことはない。まともなマネジメント層であれば、調整してくれたり解決に至るヒントをくれたりする。(全体的な構造や仕組みを意識せずに、個人の能力に依存するようなマネジメント層には気をつける)

・疑問に思ったことは書き留めておき、適切なタイミングで、適切な言い回しで聞くようにする。その場で聞けるものは聞いてしまっても良い。そういうことになっているからとスルーするのはもったいない。

・誰に対してでも、質問するときは背景を説明したうえで、自分がどこで困っていて、どんな情報や助言を欲しているのかを明確に伝える。

・内心で「仕事ができないのかな」と思ってしまうような人でも、その人について評価したり陰口めいたことを言ったりしない。どうすればその人がより良く成果を出せるか、どのような環境を整える必要があるのかなどを考え、そのために自分には何ができるのかを考える。あくまで「改善するために何ができるか」を考える。その人がやりづらいのは能力ではなく環境によるものかもしれない。

・自分だけが良ければ良い、というマインドで仕事をしない。チームで成果を出すということを意識する。(ただし、チームがすでにのっぴきならない状況になっていて、なおかつマネジメント層がそれを問題視していないときは、自分がオーバータスクにならないよう気を付けながら早めに脱出する)

・「仕事をしているときの自分」というわたしを新たに生み出さない。怖がらずに、いつもの自分でいることを大事にする。

 

書いてみたらちょっとだけすっきりした。結局田中さんと妙な感じのままさようならしてしまったのが心残りだけれど、過ぎてしまったことは仕方ない。またどこかの飲み屋で偶然出会える日を期待して。明日からも無理せずゆるっとがんばってこ~。

おわり